家族が自然に触れ合う
空間設計
自然豊かな中庭を含めた共有空間において、家族同士が自然に触れ合い、質の高い生活が送れるというコンセプトでちょっと贅沢な共同住宅にチャレンジしました。
昨年から続くコロナ禍の社会状況から、働き方の在り方や家族との過ごし方について今までとは違ったことが住環境にも求められるのではないかと考えられますが
この度の共同住宅がそれに少しでもお答えでき、お役に立てればと思っています。
施主 宮崎 榮美子
下鴨の共庭住宅
京都市左京区下鴨、木造住宅が密集するこの地区に小さな集合住宅が誕生しました。
このプロジェクトの始まりは約3年前。
昭和の賃貸戸建ての建替えに際し、通り抜けの交通量が多い道路からいかにして静かな住環境を確保するか、庭をどのように配置するか、屋根付きの駐車場をどのように確保するかを検討。結果として、各戸に専用の小さな庭や駐車場を確保するのではなく、3戸の住宅が中庭を囲う集合住宅の計画となりました。
窓先に見える庭の樹木、樹木が作り出す陰翳、四季折々の花、実のなる木には鳥がやってくることもあるでしょう。
中庭で空を見上げると、この家だけの空が切り取られます。
大きなテラスでは朝食を食べたりハンモックに揺れたり多様な使い方ができます。
自然豊かな住環境を作ることで、一般的な賃貸住宅には無い暮らしが実現します。
クライアントの想いのこもった瓦葺き屋根とエントランスの石畳、陰翳のあるかき落としの外壁がこの建物をさらに趣のあるものにしてくれました。
交通の便や床面積などの画一的な条件で住まいを選ぶのではなく、この「下鴨の共庭住宅」はビジョンに共感する人が集い暮らし、中庭を通じてコミュニケーションや思いやりがうまれることを期待しています。
中田哲建築設計事務所+好日舎
中田哲 中田貴子
写真:外観
写真:北
写真:東
写真:西
担当者より
2020年4月に着工。梅雨の長雨に苦労しながら上棟を終え、設計の中田先生とも週一回の定例会を開き、打合せを重ね、ようやく完成までたどり着きました。
Salut井筒は子育て世代が共用の中庭を通じて一緒に成長していける共同住宅となってます。それぞれの住戸に広いバルコニーがあり、夏はお子様同士のプール遊びの場になったり、中庭の砂場で遊んだりと子供たちの笑顔が目に浮かびます。
こういった他にはない共同住宅の施工に携われたことに感謝いたします。
フラットエージェンシー 一級建築士 中道 俊樹
詳細
2021年2月25日 竣工
賃貸住宅
施主:宮崎 榮美子
設計 中田哲建築設計事務所+好日舎:中田哲 中田貴子
現場責任者:一級建築士 中道 俊樹
施工:株式会社フラットエージェンシー 建築工房 京匠
グッドデザイン賞 受賞
公益財団法人日本デザイン振興会が主催する『GOOD DESIGN AWARD 2021』にて、『集合住宅 [下鴨の共庭住宅]』がグッドデザイン賞を受賞いたしました。
- 受賞対象名
- 集合住宅 [下鴨の共庭住宅]
- 事業主体名
- 有限会社ミヤマタ不動産
- 分類
- 小規模集合住宅
- 受賞企業
- 有限会社ミヤマタ不動産 (京都府)
- 株式会社フラットエージェンシー (京都府)
- 中田哲建築設計事務所 (京都府)
- 好日舎 (京都府)
- 受賞番号
- 21G111083
- 受賞概要
受賞対象の概要
※掲載している情報は、受賞当時の情報のため、現在は異なる場合があります。
概要
京都市左京区下鴨。第1種低層住居専用地域に建つ小規模集合住宅の計画。現在の賃貸物件の供給戸数はマンションと貸家が主流だが、その中間の規模だからこそ実現出来る住環境の提案。交通の便や床面積などの画一的な条件でなく、緑豊かな環境を提供し、建物のビジョンに共感する人に選ばれる集合住宅を目指しています。デザインのポイント1.敷地を分割せず1敷地に集合住宅として計画。小割した隣地間に生じる無駄なスペースを作らない。
2.シンプルなロの字型の建物配置。中庭を共有することで自然豊かな住環境を実現。
3.各戸に屋外空間を設ける。中庭に風が通り、住民同士のコミュニケーションにも繋がった。
デザイナー
中田哲建築設計事務所 中田哲+好日舎 中田貴子
利用開始
2021年4月
設置場所
京都府京都市
受賞対象の詳細
背景
京都市左京区。下鴨神社や鴨川へのアクセスのよい小さな木造住宅が密集する住宅街。老朽化した昭和の賃貸住宅3戸の建替え計画。交通の便や床面積などの画一的な条件で比較されるのでは無く、建物のビジョンに共感する人に入居してもらえる賃貸住宅を計画しました。通り抜けの交通量が多い道路から、いかにして静かな住環境を確保するか。豊かな庭をどのように配置するか。屋根付きの駐車場をどのように確保するかを検討。正方形に近い本敷地を3分割すると南北に細長い形状となり、カーポートを設置すると、ネコの額ほどの小さな庭しか残らず、各戸の間には使い道のない無駄な空間が発生します。本計画では1敷地に3住戸が中庭を囲い、大屋根がロの字型に繋がるプランとしました。
経緯とその成果
中庭を中心に東西北に住戸、南に駐車場と上部にテラスを配置。天井の低いエントランスを抜け、中庭の回廊から各戸の玄関へ。回廊から空を見上げると四角く切り取られた静かな空が出迎えてくれます。この計画の核となる中庭は、アオダモの木を中心に四季を感じられる植栽を植え、窓先に見える木立、樹木が作り出す陰翳が屋内からも自然を感じさせてくれます。各戸を大屋根で繋げることで生じた屋外空間を、専用の駐輪場や広いテラスとして使用。テラスでは朝食を食べたりハンモックに揺られたり多様な使い方が出来るだけでなく、中庭への風通しと隣戸の生活音への配慮を両立させました。また、前面道路周りにも緑を配置し、近隣を通る人々の目を楽しませてくれます。自然豊かな住環境を通じて住民同士の価値観が共鳴し、屋外空間を通じてコミュニケーションが育まれることを期待しています。
仕様
敷地面積:452㎡ 第1種低層住居専用地域(建蔽率60%、容積率100%) 建築面積:255.㎡ 延床面積432㎡ 主体構造:木造 2階建(建蔽率57%、容積率77%)
審査委員の評価
中庭型の集合住宅である。中庭を設けた集合住宅は、これまでにも数多く計画されてきたが、そこを囲う住戸数や規模、あるいは中庭のスケールによって実際には上手く機能していないものも少なくない。しかしこの集合住宅は、3戸という規模と、住人が自分の庭だとも感じ取れる適切なスケールによって、実に快適な空間として住環境に貢献している。さらに各戸のテラスが中庭に対してトンネル状に抜けていることで、この中庭は閉鎖的でない、心地よい開放感も獲得している。このような関係性であれば、おそらく住民相互の緩やかなコミュニティも育まれることになるだろう。
担当審査委員| 藤原 徹平 網野 禎昭 千葉 学 手塚 由比
関連サイト
中田哲様によるドローン撮影の動画:https://youtu.be/a3QYjnGN8Xs